2013年にユネスコの世界遺産に登録された富士山ですが、昔から現在に至るまで日本文化の形成に大きな影響を与え続けています。ところが、観光地化による環境汚染が進み、世界遺産登録が見送られた経緯がありました。今回は、どんな環境汚染により富士山の雄大な自然が脅かされたのか、また、今取られている対策は何かをみていきます。
世界遺産でもある富士山では、1960年頃から急速に国内外から観光客が訪れるようになりましたが、当時は環境に対する意識が低かったため、一部の観光客によりごみのポイ捨てがされていました。ごみには、たばこの吸い殻、ペットボトル、空き缶などに加え、パソコン等の大型廃棄物もありました。また、一部のごみの中には、ポリ塩化ビフェニールなどの有害物質も含まれていたため、それが雨により流出し、土壌や湧き出る水を汚染し続けてきたのです。親しまれてきた名水と言われた忍野八海の水も、今は飲めなくなっています。 この状況を鑑みて、市民ボランティアによる清掃活動が行われるようになりました。中でも、富士山の環境保護を目的として作られたNPO法人の「富士山クラブ」は、6000人以上もの市民ボランティアと、毎年60回を超える大掛かりな清掃活動を実施しています。この活動には、地元の企業や学校、子供から年配者まで参加していますが、毎年数十トンにも及ぶごみを回収しています。
環境汚染を経て、多くの取り組みにより、五合目より上くらいは富士山本来の美しさを取り戻しつつあります。ただ、国道が近い山麓部においては、いまだごみのポイ捨てが続いています。日本が誇る富士山をこれからも守っていくために、環境保護の大切さ、自然に立ち入る時のモラルなどについて、今一度よく考える必要があるでしょう。